UDO MUSIC FESTIVAL

早朝の三時にノビ、チェキちゃん、弥生ちゃんと合流してデッパツ。今やスーツ以外の格好で歌舞伎を歩くのが怖い、これが職業病というものなのかと言外に鳴らす俺チャンなのでした。ホスラブアクロフォビアとでも呼ぼう。


遠足だよ、気分は。夏が始まるんだよ。ワクテカ使用のCDを焼いてきたから、道中はコイツで盛り上がってくつもりだったんだけど最悪の天候だよ。雨こそ降りはしないけれども霧っているよ。Soap discoで湧き上がるつもりが。


会場に到着。午前八時。人の「まばらさ」に閉口すべし。
多く見て1500といったところか、集客。弥生ちゃんはこれが人生で初めてのフェス体験となるのに、this isフェスみたいな認識の仕方をしてPTSDにでもなられたらどうしよう。こんなはずじゃ、何かが違う永遠の夢に向かって的な、大黒的な黒いモヤモヤは霞がかった山の天候と酷似しているね。


フードブースにはおよそ30の出店。おりからの雨でビール売れずカキ氷に至っては言の端に乗せるのも恐ろしいくらいのシケシケ。まず見渡す限り年齢層が凄いよ、およそ日本のロックフェスティバルって概念を覆すような光景。むしろ「ヘステバル」って感じだな。ビニールシート持参率とGパンの着用率は国内随一だろう。出演アーティストの豪華さも。あ、今の皮肉っぽいかな。


Charのコスプレみたいな人も結構見た。そんな痛烈なアウェイ感に包まれながら、いや、むしろその感覚を麻痺させる為にルービでケンパイ。軽やかな泡立ちのビールはドネルケバブと澄んだ山の空気をアテにしてスルスルと喉を通るね。温度も最適に冷えていて実にウマかった。


モビリタステージ(メイン)のトップバッター、レット・ミラーの登場を控えて徐々にお客さんが集まりだす。天候もとりあえず小雨は止んでくれた。「レット・ミラー」…俺たち四人には全く予備知識がなかった為、どんなアーティストなのか知る由もない。だから俺たちは遊んだ。レット・ミラーがどのような風貌をしていてどんな声でどんな曲を歌うんだろうか。満場一致の最多票は「ベット・ミドラーみたいなクロいオバハン」とあいなった。


俺たちが二杯目のビールを手に取った頃、ちょうどイベントの開演となり、背中の後ろからはレット・ミラーの演奏が聞こえてきた。…うん、全くクロくないよね。確実に70年代を踏襲したアメリカンな匂いがするよね。つーかこの人らがいついつから活動をしているんか知らんけどもリアルで70年代くらいの人たちなんじゃないの?(実際には現役バリバリ、ここ数年のソロアーティストだったんだけど)とかのたまいながら客席の外れにあるハンモックに揺られてた。ドラムのチャンネーが小柄で可愛らしかった。悪くないです、レット・ミラー


その頃、二番目の大きさを誇るスクエアステージ(全く誇らしくない、学祭に毛の生えたようなお粗末な造り)ではTHE TYDEというグループがチンケなステージの柿を落としていた。それを見つめる客数、およそ40人。これは大きくサービスしての数字だ。
遠路遥々だぜ、海外から東洋の果てくんだりまでやって来て「さぁ、やってヤンヨ!」と幕が開けたら40人。よんじゅう。
…もうちょっとしっかり宣伝してやってくれよ、ウドー。ホント、すげえ申し訳なくなるよこっちが。この後同じステージで演奏したいくつものバンドさんもさ、ましてやワープド・MTVなんて両ステージじゃあこれよりもっとヒドい、バンドのメンバーも苦笑いしながらビール飲むしかないようなライブをやらされてんだぜ。マジ悲惨。悲愴だよ、組曲だよ。
そんな逆境の中でTHE TYDE。発音がイイよね、タイド。もう、全然シャカリキ感が無い。タ〜イド。うん、無いね。
でも曲は割かし良くって、これも最近のバンドらしからぬ土臭さ。ボーカルのルックスが目も当てられないのがまたイイ。さながらディランといったところか。灘儀 武。あいつのHR/HMな物真似もまた必見だがここでは全然カンケイないね。
最近はこういうね、ちょこっとダサいバンドが好きなんでむしろ新しい発見だと思えるし一つの醍醐味でもあると思うよ。タイド、終演後ベースの兄ちゃんに熱烈なファンを演じて握手してもらう。「え、こんな俺らにファン?」とばかりに身振り手振りでコミュニケーションをとろうとしてくれる彼は朴訥な人柄の田舎育ちっぽい、根っからの善人だった。ちょっとこれから贔屓していきます、タイドは。皆も応援してあげよう。


そしてランチ。
バディ・ガイのギターをBGMにトムヤムラーメンを食べる。それを富士山の麓でやっている。こんな事は日本だからこそできる芸当だろう。バディ・ガイのギターは鳴いていた。泣きまくっていた。ききわけがなかった。


ヌーノとプリテンダーズには興味のキョの字もなかったんで三番目と四番目のステージであるワープドとMTVを覗きにゆく。MTVではシュノーケルが、ワープドではTHE BLACKPOOL LIGHTSというやたら体格のいいバンドがスタンバってた。先にシュノーケルがギター鳴らす。どっかで聴いたことあるメガネロック。割りとしっかりしたアンサンブルはいいとしてもう、曲が、ミスチルっぽくて赦せる赦せない別にパクリ臭くてやっとれん。別にいいんだ、二番煎じ三番煎じが悪いって考え方は今ないし、そんな事言ってたらジャンルなんて存在しなくなっちゃうし。でもこのテのギターロックは、全然イイと思えない俺チャンの嗜好の問題で退散。
で、上のほうでも書いたけど周波数の問題でPAのセッティングやり直しを諦め半分の苦笑で待つTHE BLACKPOOL LIGHTSの面々。おっと彼らがすすっている缶ビールはサッポロじゃないか。いいぞいいぞ。思わず俺らのミーちゃんハーちゃん心が炸裂してやたら手とか振ってやる。満面の笑みでリアクションいただきました。なんだ、なんでこんなに仕事しとんねん俺ら。
まぁ〜…エモになるんかな?一応。このシトらの曲って。むやみやたらとスネアを殴りつけるドラムの方が印象的でした。パワフルにも程がある!


こっからが忙しいんだ。
ポイポイっとスクエアに戻ってBEN LEEのライブの後半だけ参加。なんだ、BENて名に付く人間は基本的に優れた音楽センスの持ち主であって、BENSなんてユニットが結成されちゃうのも納得いくわ。BEN LEEは俺ら四人のお目当てBEN FOLDS様とも交流あるし、どことなく似たものも感じないことない。従って評価も悪いわけがない。最近やたらと「イイなぁ」って言うけど、俺、ホントにイイなぁって思える事が物が多いんだろうね。「イイ」って言葉は曖昧だけど、その言葉でしか表現できない事もないんだろうけど「イイなぁ」って思っちゃったら書くしかないよね。それは俺がアホになったのか素直になってるのかわからんけどさ。
最後「We're All in This Together」ではステージを飛び降り客席中央のお立ち台に乗ってクラップハンズを指揮する彼。ショーシャンクの空にを彷彿される1シーンでした。


Char。26年も日本人をやっていながら実際に生で見るのはこれが初めてだったりします。ちょうどこの一週間くらい前にスカパーで三人の侍のリピート放送を見てその凄さに舌を巻いたところだったんだけどやっぱり違うね、BEN LEEの出番が終わると一気に人が前へ詰め掛けてスクエアステージがようやくライブっぽくなったよ。ってもその数300くらいなんかなぁ…モビリタステージにビニールシート敷いてふんぞり返ってるオッサンらは確実に動いてないよね。もう、横になって出されるもん出されるもん受け流してるだけ。コミュのトピック読んでてもそうだけど、高年齢向けのフェスってことでコレはコレとするのか、やはり酷すぎる陣取りや携帯カメラでの撮影に対して注意すべきなのか。いずれにしたってそのどれもに無関心なスタッフの仕事意識の低さは憤っていいトコロだと思いますけど。
な、わけで分不相応に小さなステージでChar。アカンわ、Charって言うとどうしてもたむらけんじを思い浮かべてしまう。チャ〜ァ。
しかし歌詞が面白いね、この方は。まさにどーでもいいような事を響きだけで歌いまくる。小学生の作文みたいな歌詞を。これ別に文句じゃないよ、こういうのもアリなんだって新しい衝撃。なんだ、声質も地っぽくて大人なんだけど言葉と言葉の間に伸びがあるから、それがすごく新鮮に聞こえたんだ。ここが民生や山崎まさよしじゃまだたどり着けない領域かな。ファンクネス。悟りだ。


三曲程度に止めておいて急いでモビリタに走る。THE DOOBIE BROTHERSを観る為に。次いつ観られるかわからんでしょ、もう二度とないかもしらんでしょ。
人もね、この時間になると開演の時の数倍に増えてて…10000人くらいはいたのかな?その数字の是非はここでは伏せるってことでご容赦ください。
タイトルは覚えてなくても聞き覚えのある曲が次々と披露されるし。オッサンやオバサンがね、立ち上がってノリノリで手拍子しているのを見ると音楽は無限大だって思った。ウチの親父も60手前にしてまだバンドやってるんだけど、その周りに集まる人くらいしか知らなかったのね、大人の音楽好きって。連中はそのジャンルのエキスパートっつかまさしくマニアだから(ドブロやバンジョーを弾きこなせる人間なんてそうそうおらんでしょ)リスナーよりかはむしろ全員がプレイヤーなんだわ。でもここにいるオッサンオバハンはそうではなく(いや、知らんけど)誰もが一ファンとして往年のロックを楽しみに集まってるわけで。そんな風にいつまでも人生のほとりに音楽を置いていけるって素敵だな、現在進行形であってもいいしそうでなくって一日限りでもいいと思うよ、あんだけ大勢の大人が子供の笑顔でいられるなんて。俺も、できれば嫁さんにもロック好きな人を迎えていつまでも一緒に楽しんでいきたいなーって思った。「Long Train Runnin'」の沸き具合、老若男女のニヤリ感は多分今日一番のもの。


ドゥービーはピースフルな空間だったけどね、ジェフベックは真逆でしょ。完全にカリスマ。支配者だな。さっきのCharにしてもそうなんだけど今日のイベントはアレだよね、ロックにヒーロー像を描くことができた時代の、それを今でも抱かせてくれる「ヒーロー」たちの祭典だよ。今なかなかおらんでしょ、特に日本だと派手な衣装着たりメイクしたりすると完全に色モノ扱いされて。しょーもない日常感だけがもてはやされてロクすっぽ歴史も知らないようなメガネデブが本物みたいに騒がれる。幻想とか無い。
もっと「あーなりたい」とかあっていいと思う。誰それに憧れてバンド始めました、なんてハイスタ、ルナシー、ミッシェル辺りで止まってるんじゃね?ビジュアル系でもディルアングレイ止まりだろ。誰がなりたいと思うよ、ヘロヘロのメガネクンに。セックスしてる奴が偉いわけじゃないけどモテている男ってのは同性から見ても魅力のある奴が多いし沢山の異性と付き合うってのは学べる事も多いと思うわ。
話それたけど、テメエの名前でメシが食えるというのは素晴らしいことで、ソロになっても魅力を失わないヤツってのはカリスマと呼んで問題がないでしょう。俺はその真価がわからなかったんだけど、そういう事ができているJEFF BECKという人はやはり凄いような気がする。


メイクで思い出したけど奇しくもこの日、筋少の再結成が発表されたみたいですね。ヤバすぎるでしょ、マジで、マジでタカまる!俺が今、タカまっています!!!


ジェフベックの前にシュンが到着して合流したんだった。五人で再度ケンパイして、グリーンカレーとか食った。いささか過食な気がしないでもないがフェスというのは非日常であるのだから、いくら食べても太らないし金も減らない。きっと。


時間は前後します。
ジェフベックの途中でそこを抜け出してスクエアに。ポ主!とか言わないけどやっぱしBENさんだけは最高のポジションで見たいから早めに陣取って山のフドウ。チェキちゃん&弥生ちゃんは右方最前と気合いの入りようが違うな。俺らとノビは左中ほどで視覚&聴覚双方に折り合いを付くベスポジキープ。シュンはギターの虫なので引き続きジェフベックのスレイブね。


執拗なサウンドチェック。まじひつこい。それこそC.WニコルはマジックナンバーズかってPくさいオッサンが何度も何度もステージをうろつきまわって確認作業する。いや、ホントまちくたびれた、予定を十分押してBENさんの登場!
のっけには未発表?のインスト。久々に軽やかなナンバーでSILVERMANの延長線とはまた違った懐かしさを感じさせる一曲。(や、既発曲だったら己の無学を呪う)そこからは〜………去年のセットの焼き直しデシタ。。。armyも、金返せのアレンジもまるっきり。。。


だから何だ。そんなん関係ないし。
はっきし言って、演奏は酷かった。同じ曲の同じ個所で何度もトチるしセットリストは上記の通りだしナメてんのかテメエとも思った。
でも、いいです。もうこれは僻目と言われても仕方がない。
滅茶苦茶ハジけるとか滅茶苦茶聴き入るとか、そんなんないけど、更に言うならライブよかCDのんが体動くかもしれないけど、ま、BENさんが日本に来てくれて、やりたいようにやってるってのを見れてるだけでいいというかね。なんて宗教的。
詳しいことは詳しいフリして詳しくないので書きませんけど、実に好きです。


BENさんの時間帯のスクエアステージは、会場中の20代が集まってきたんじゃないかと思えるほど若々しい客層の中でライブが行われました。


そしてその裏ではサンタナが。
もはや良いとか悪いとかを超越して超次元的な世界。ようやく暗くなり始めた夜空に紫の照明が最高に映えている。ラテンは、演歌です。


サンタナのスレイブでもあったシュンを迎えて花火のセレモニー。霧が濃すぎて輪郭がわかりません!!




総括ってほどのものは書けませんけど勿体なかったなというのが感想、興行的にもごくパーソナルな部分でも。
もっともっと告知をするべきだった。単なる同窓会で終わらせるんじゃなくって俺たちの世代にも絶対に見せておくべきライブだったように思う。サンタナにしろドゥービーにしろ、カケラでもロックを好きな人間が避けては通れない歴史をもっともっと大勢の人間に見せる方法はなかったのかな?また、タイドの例が顕著だがわざわざ来てもらったバンドさん達に最大限のシチュエーションでライブをやらせてあげようという気持ちはなかったのかな?モビリダからスクエアに通じる地下道は無意味に狭いし長いし、もっとよそのフェスを見て勉強してほしかったよ、博覧会じゃないんだよフェスって。ウドーさんよ。対象年齢を高めに設定って、ほぼそれ限定にしたかったのかね?若い人もオッサンも共存させようって考えはハナからなかったのかね?あー、でもどうだろう。頭の悪い自称フェスラバーがムダにOiOi言い出す悲劇に比べればこれでよかったんかもしらん。オッサンもオッサンでムダにポ主したり興味ないバンドのときは客席のド真ん中であるにもかかわらず高鼾かいて寝てたりあるけどどっちかゆーたらオッサンのが愛があるやろ、このラインナップに。何でも楽しむ姿勢は大事やけどアホばっかおるしな、若いのには。でも会場の設営はヒドかった、やっぱしもっとあちこち行き来したくさせるようなフェスにしないと。


個人的には…レット・ミラーとタイドに不勉強だったのが悔しい!でもこれも、新たな出会いのきっかけだったし良かったといえば良かった。今日(23日)に出てるThe Click Fiveも知ったばっかりだけどヤバイいですよ。最近の若手には辟易してたけどいるとこにはいるね、ウドーのブッキングセンスは確かかもね。あー、Pop Princessマジでイイ曲。


え?締めですか?
ダラダラとした文章を書いたので、最後までグダグダしていきます。まだ帰りたくない、終わりたくない、それがフェスの名残なのかもしれません。あ、上手いことゆっちゃった。ぽえぽえ〜。