Salyu・小谷美紗子

@LIQUID ROOM ebisu


先攻は小谷美紗子
割と何枚かはCDも聴いていたんだけど最新作の他は心に引っかかるものがなく期待も薄めに見たライブ。途中でシンディ・ローパーのカバーやベートーベンの「悲愴」をインストで奏でたり試み的には面白く、観ていて退屈する内容ではなかったように思うよ。あと、この人は歌詞がヤバいってのは風評で聞いてた。歌うときの顔もイイって聞いてた。けど両方が聞き取れない&見えないままで終わってしまったんだよ、残念。最後に「Rum & Ginger」やってくれてよかった。う〜ん、実にキャロルキング。(本当は長文を書いたんだけど読んでも気持ちのいいものにならなかったので削除しました(苦笑))


Salyu
01.VALON-1 02.風に乗る船 03.再生 04.landmark 05.Dramatic Irony 06.name 07.to U en.Tower


こちらはベタ褒めモードでw


黄色い逆光を背にアカペラで始まる「VALON-1」、初期のシングルの中でも一番多く歌われているこの曲が始まりであり進行形であることを示してる。モッチャリとした後ノリのリズムがもう、壮大さを写実。すごくサイケデリックでちょっと宇宙、呼吸の苦しさを知る。そして飛行船が大きくグライドしているようなイントロ、「風に乗る船」でSalyuは翼を生やし隣にはいないのに、覗き込まれるみたいに誘うみたいに手を差し出してくるよ。パズーのように大きな空の世界の話。


「今年もたくさんの夏フェスに出たけど今日は時間も一時間もあるし、普段やんないような曲も歌っちゃうよ」そうMCで告げ始まったのは「再生」だ。「再生」にまつわる話ではないんだけど、先の然りSalyuのMCがものすごく上手になってる事に感動した。独特の、ちょっと頭の足りない子っぽい口調はそのままだけど抑揚があって、短い中にも起承転結を作って、あー、これ、説明できねーけど、一人舞台ながら周りをキチッと巻き込んで次の曲への導入部にできてる。キャラのアピールも充分。MCを聞いて「この人上手いな」なんて普通は思わないでしょ?凄くビックリするよ、Salyuトークは。こんな風にして言葉を紡ぐ人を知らないな、俺は。まるで演劇を観てるみたいだ。


大人しめな「再生」が終わるとアレンジされたイントロから俺の大好きな大好きな、もー、去年一年で発売された曲の中でも一番大好きな曲である「landmark」が静かに広がる(因みに去年一年で観たライブの中で一番良かったのもSalyuのAX、landmark tourの公演ね)。来るかな?来ないかな?淡い期待と願いを込めて待ってた曲だけに感無量。っつか茫然自失って四字熟語は俺の人生においてこの曲を聴く時以外に使いようが無い。麻痺るからね、確実。手先、足先、ピクリとでも動かしてはいけないような気持ちになる。実際の話、この曲の演奏中に俺はあまりの渇きから唇をペロッと舐めたのね。閉じていた口を開いたのね。したらもう、それだけで自分を巻き戻したくなるほどの大後悔なんだわ。上手く例えられないけど、濁った沼にビー玉をそっと沈めて波紋ができなければ合格なんだけどその一舐めによって水面にも水中にも醜い幾つもの波が、泡が立っちゃったような失敗。伝わらんよなぁ(苦笑)。自分自身がそのビー玉になるんよ。粘りのある培養液か何かにズブズブと、完璧な静寂の中沈んでいきたいのが本音なんよ。わからん?もう、ええわ(苦笑)。


何を話していたんか忘れるなぁ。


あ、更なる俺の我儘の話か。
この曲はサビの後半で一気に音圧が増えて波涛の勢いを見せる構成になってるんだけど上モノの数が少なかったのとベースの四分が歯切れが悪かった為、ちょっともどかしい感じに終わってしまったかもしれないってのはあるって話。欲を言えばVJも入れて欲しかった。
こと「landmark」に関しては完璧なものを求めてしまう周りの客の一挙一動にも反応してしまう。頼むから咳をするな、頼むからキョロキョロしてくれるな、って病んでるくらいに溺れたくなる。ヤバいかな、俺。。「VALON-1」もそれに近いんだがあっちは毎回アレンジを施すのが定番みたいになってるから、フェイクなど予想以上の+αの楽しみができるからね。


一瞬の静けさの後「サリュちゃ〜〜〜ん」とか言うキモヲタのキモい声にムカっ腹を立てるも次の「Dramatic Irony」で世界が一変、楽しそうに動き回りながら歌うSalyuに「こんなDramatic Ironyもあるんだ」と新しい側面を見せられる。そういう意味ではいいファンファーレになったのかも、あの喚声も(笑)
暗い暗いと思っていた「Dramatic irony」が暗くも底から数センチの距離に飛び始めた。面白いなぁ、こんなにも微妙な違いがこんなにも大きな違いに拡大するなんて。


そして二度目のMCね。
「誰かに名前を呼んでもらう瞬間、心と体が合致する喜びに包まれる。そんな内容の歌です。」って説明を受けて明日発売の新曲である「name」へ。凄くありふれた曲のようで一箇所、何ていうのかな、勝手に言えば北欧っぽい(知らんけど)メロディラインが挿し込まれてるんだよ、そこがクセになる。仲良しであるという一青窈の歌詞も、今までのSalyuにあったようでなかったダイレクトな心情伝いに大いに買っている。
大きく分けてPOP SIDEとDARK SIDEに別れるSalyuの持ち歌だが、「name」は上手い具合にその中間に腰を下ろしてるんじゃないだろうか。また、「悲しいけど悲しくない」「嬉しいけど嬉しくない」常にある側面を歌いながら同時にその反対の表情をも湛えているようなSalyuの存在は不思議な曖昧さを孕み、最初にも書いたようにとてもサイケデリックで非日常の中の日常を歌えているように感じる。


照明の使い方も面白いよ。青とピンクの交錯、緑と赤の交錯、何よりも迫力があるのはそれも最初の「VALON-1」のようなシンプルな逆光だけどね。


本編最後にはBank band名義でリリースされた「to U」、アンコールではのびのびとした表情で「Tower」を歌ってくれた。全ての終わりには大きく飛び跳ねて「バイバイ」を連呼するSalyuを見て「聴き手がカリスマ的な存在を強要しちゃイカンよな、いつか破裂しちゃうよな」って自戒しようとするんだけど「VALON-1」やら「landmark」みたいな圧倒的な曲世界を持ってる曲だけには…期待せずにいられなくなる。


Salyuの世界はジブリに似てる。