Sods

Cry for xxx... ステージの上でしか 愛し合えないから…


絶対に面白いから!一見どころか必見の価値あるから!って何でそこまで俺が布教に励まねばならんのだって位の熱烈勧誘が実を結んでやっとバンド仲間二人を牽引するに至る。以前にも野村さんを連れてったがこのバンドは俺ら世代の人間なら爆笑は免れ得ないバンドだと胸を張ってオススメできる。ましてや今日なんてビデオの無料配布があるんだ行かない手は何処にも無い。


会場の乙に着いたら既に長蛇の列が。先物買いの好事家どもの間ではもう既に相当な噂になっているとかいないとか。ポスト氣志團はこいつらしかいない!みたいな。書くなら。タワレコばりに書くなら。ぞろぞろと入場する客層はまばらもまばら、圧倒的なピアスの穴を顔面に開けまくってるパンクスのお兄ちゃんからサブカル大好き、オーケン大スキ!みたいな眼鏡少女、後ろを向けば「私、昔X大好きでした特攻隊長やってました…HIDE〜〜〜!!!返ってきてHIDE〜〜!!!」みたいなケバいオネエサンとか。はたまたYO!ビールボーイ系も、人種の坩堝。これはSodsが老若男女分け隔てなく愛されているという証!?ざっと見るにその数およそ150、超満員で膨れ上がった客席の前に、満を持して4人の軍神たちがとうとう舞い降りる(45分押しってナメテンノカ)。


重厚なギターリフが耳を劈き始まったのは「POISON」、彼らのライブの幕開けを飾るにふさわしいナンバーだ。お揃いの布袋ギターを自在に操り、「アノ」ステップを踏みながらぐんぐんと加速してゆくゴリマチ&ゴトーサン。や、やばい…やばすぎる…列島震撼、早くもこの時点で今日のライブの成功を予感させる名演っぷり。熱狂の渦の中続いて叩き出されたのは「ロマンス」。「愛に きづいてくだっさっい ボクが 抱き締めて あっげっるっ♪」。ステージ上は既にトランス状態、大仰に抱えたベースをあっさりと捨て去りCCYが客席を煽る!負けじと手扇子で応える客!一進一退の攻防、凌ぎを削りながらも一体感に満ち溢れているこの感覚は何だ。そして挨拶から始まるゴリマチ氏の長い、本当に長いMCを挟んで「I LOVE YOU」で少しクールダウン。キラメク照明、透き通った歌声、それらはまるで一時の清涼剤のようでもあった。顔面をくしゃくしゃにしながらアカペラ。暴力のような歌。「I LOVE YOU」を演奏し終えると突然メンバーがステージから姿を消す。何や何や、どないしたんや?!と狼狽する客席を歯牙にもかけずにメンバーの自己満足なソロコーナーが。ふざけたバンドをやってはいるが元来数多のバンドで修羅場をくぐってきた兵達、ここでその秘められた実力をいかんなく発揮する。ライトハンドとかライトハンドとか。中でも「C様」と崇め奉られているベースのCCYは女性人気も高いようで、彼の発狂っぷりは最早Sodsにとって欠かせないものになっているだろう。
摩訶不思議に展開に全く着いてこれないオーディエンスを慰めるように包み込むように歌われたのはピアノ伴奏による「GLASS」。優しさと激しさが同居するこの曲はまるで愛撫のように観客の心を撫でまわした。揉みしだいた。
そして長い長い、ホントに長いMCが必要も無いのに挟まれ、「俺たちが初ライブで演奏した曲です。聞いたこと無い人ばかりだと思うけど、きっと知ってるはずだから」と納得の紹介から紡ぎ出されたのは「FOREVER」だ。感情を噛み殺す様に歌う彼、「エモ系」というジャンルが氾濫している現在においてもこれほどまでに自分の思いを曝け出した歌を歌えるボーカリストは本当にごく少数なのではあるまいか。ゴリマチの歌、ゴリマチの視線、ゴリマチの一挙一動が多分の感情を孕んで客席に伝わる。永遠…永遠に「これからの道で何があっても今を忘れないさ(歌詞が秀逸!)」と歌う彼と我々の間にはもう、何が起きても壊れることのない絆がハッキリと見えていた。
更に長いなが〜い、カミカミのMCを挟んで怒涛の後半戦、狼煙を上げるのはこの曲しかない!「Melty Love」!静と動を見事に使い分け、会場全体が手扇子で咲き乱れる!C様が煽る!楽器を弾かない!「Melty Love はなさない …ギギギ はなさない …ギギギ♪」蕩けてしまいそうな甘い旋律に前方の婦女子が失神して係員に運び出されるというアクシデントにも負ける事無く最強最大のキラーチューン、「ROSIER」で乙が暴動する!巻き起こるモッシュ、湧き上がる雄叫び、男も女も我を忘れて満面の笑みで暴れまわっているその姿はさながらエイジャナイカ。間奏部分での「アノ」C様による英スクリームも健在だ。スキを見せればヌルリ、と忍び込んでくるゴトーサンのギター、終始安定したリズムで観客の暴徒化に一役も二役も買っていたドラムの…ドラムのえ〜っと…なんだっけ…えー…ドラムの…ドラムの………ドラムのなんとか!!
四つの旋律は重なり合い、観客の熱狂を背中に受けてどこまでもどこまでも遥かの彼方まで轟いていったように思えた。世界中の人々の耳にSodsが届いたように思えた。Cry for xxx...愛し合いましょう…


やんなくてもいいのにアンコール。長ぇよ。しかしエンターテイナーでもあるSodsはグダグダになりながらもまだその奥深さを見せ付けることを止めようとはしなかった。ここへきて新曲、その名も「WISH」がプレゼントされる。でも誰も聴いてない。激しいマスターベーションの公開に無表情を装う客席…しかしそれはこの後起こるXXXへの布石であったことを我々は思い知る。
説法みたいに長い長い最後のMC。のはずが何やらいつもと様子が違う。それこそお通夜みたいに重苦しい空気。沈黙を破ってゴリマチの口からこの日の「重大発表」が告げられる、それは…


Sods 終幕


愕然とした…こんなにも未来を預ける事ができるバンドとの出会いに無限大を感じていた矢先の出来事だった…「FOREVER」は「FOREVER」では無いのか?信じられない…信じたくない…
しかしゴリマチは丁寧に言葉を選びながらこう紡いだ。「今まで…四人で色んな音楽を作り上げてきたけど…これからは一人一人、それぞれの音楽を(省略」
そうだ…あの「FOREVER」は嘘なんかじゃない。「これからの道で何があっても 今を忘れないさ」そう歌ったゴリマチ自身がきっと誰より辛かったかもしれない、だけど「今」は「永遠」に生き続けるんだ。忘れない、永遠に忘れる事のない確かな軌跡を胸に刻んで…泣いているヒマはない、今この瞬間を最高にアツく刻み付ける為には!涙で滲んだ思い出が欲しいわけじゃないんだ!最後の最後、ダブルアンコール。奇形の笑顔で笑う為メンバーが選んだ一曲は…「ROSIER」!!!狂え、狂うしかない!カオスは激しさを増し、最早その言葉の持つ意味さえも超越してこのライブハウスを灼熱化する。何処までが俺なのか、何処からが彼なのか。渾然一体となった客席は肉団子だ。モッシュ、手扇子、合唱…様々な客層が様々なノリを持ち寄って、ここにしかないオンリーワンのライブを作り出している。
花屋の店先に、ならんだ。


時として22:45分。予定時刻を大幅に上回ってSodsの最初で最後のワンマンリブは終了した。
しかし彼らを求める声は鳴り止む事は無かった。鳴り始めてすらいなかった。