縛りLESSなFREEDOM、解放戦線HEREに極まれり

本来なら木曜日は早番という事で零時上がりなのだが今日は違う。二つの条件から朝まで通しで働く事を決意した。
一つは社員の体調不良、もう一つは友人の来訪である。
この友人、遥かの昔に自分と一緒にバンドなるものをやっていた仲間であり兄貴でありライバルであるという非常に私の人生に密接な係りを持って来たロクデナシである。当然甲斐性も無く仕事はしない、女にタカる、三度のセックスよりセックスが好き。加えて最近では女性の嗜好がどんどん私よりになってきてしまって、その狭い放牧地に泳いでいる数少ない餌を奪い合うにイザコザが発生すること多々。君は彫りの深いケバ女を抱いてなさいよ、ソバージュ系の。あどけない系稚い系頑是無い系は私のものだよ。そんな彼が近頃新宿で仕事を始めたので(バイトだが)是非一度、オマエの店に寄らせてくれと。うん、わかった。とびきりのお酒を用意して待ってるから遊びにおいでよ、と。下井草在住の彼は僅かな交通費を節約する為に仕事場まで(バイトだが)片道一時間をかけて自転車で通勤しているらしく、期待を裏切らず今日も愛機で乗り付けてくれた。うぜぇ。
時既に零時過ぎ。社員は重体の呈を引きずりずず…ずず…と帰宅。私の天下だ、時代(トキ)の支配者が産声をあげた。
丁寧に注いだギネスを美味い美味いとはしゃぎながら流し込む彼。俺のシェイカー捌きを思わず写メに収めようとして見事にお断りされてしまう彼。ノイローゼで禿げた友人の写メをしきりに見せようとする彼。アイドルの知り合いができたとかで何とか恋仲に持ち込もうと思案を巡らす彼。五年間付き合った女に結婚を間近にして逃げられた彼。大蒜の素揚げに喉を痛める彼(女イナイ)。久しぶりに始めた仕事バイトだが)について自慢気に語る彼。サービスされたビールと引き換えに床掃除をさせられてしまった彼。愛すべき彼。
私は変化を遂げ続ける。その一方でいつまでも変わらない彼がいる。こんなにも友情、こんなにもライバル。
いつだったか、腐れキャッチに女をつまみ食いされてやり場の無い怒りを抱えていた俺に「シバけばいいよ」と簡にして要なアドバイスをくれたのも彼。翌朝速攻で乗り込んだのは俺。その昔、某ラジオに出演した際に楽屋で遭遇した椎名林檎にわざわざ挨拶を頂戴しながらも超態度LLで軽くあしらってしまった天狗絶頂期の俺と彼。その直後彼女のデビュー曲に痺れいのいちでツタヤに走った日和見な俺。そのCDを一緒に聴いてすんなり同調してしまった彼。語れば語る程に酒が進み店内のビール、ウイスキーが逓減を余儀無くされる。伝票には記載されない謎の酒。現在俺が飲んでいるこのマッカランは一体誰が代金を支払っているんだろう。あっ、酒の神様かな。これで貴様も共犯者だと暗に鳴らして後輩にはそれとなく一本のコロナで口封じを。そのすぐ傍でその何倍ものアルコールをかっ喰らっている先輩がいるとも知らずに彼は美味しそうに楽しそうに一本のコロナを。順風満帆。人生はジョジョだ。