One day in this december

あにはからんや、一度この世に男として生を受けた以上は何らかの形でその存在を証明に変えたいと痛感させられた一夜でありました。このように髭で長髪で、頭にはベリーズ帽を被り手には半分破れた紙袋をぶらさげている俺でも(見事に中身がこんにちはしているわけですが)偶には棒に当たったりすることもあるのだな、ならば闇雲にでも歩いてみるのもいいものだな、と思わせてくれた一夜でした。おもむろに街頭で声をかけた女性と一夜を共にすることができるだなんて。
偉そうに、含みを持たせた書き方をしてはいますがセックスレスです。一緒に入ったバーで即刻、ロマンスは足止めを食ってしまいました。彼氏がいるそうです。甘言を弄しとっておきの、女を連れているときにしか利用しないバーへ巧みに誘い込み、短い官能小説の文頭はどんな書き出しにしようかなぁなんて考えを巡らせていた直後のカミングアウトです。やるせない立つ瀬無い。泣きたい気持ちは中居正広さながらなんですが私も大の大人ですからね、鷹揚と、理解のある相談役のフリを装ってしみじみと人生を諭してやったわけなのだよ。もうこれは慈善事業の類だぁね。するとだね、女は無性に、とにかく無性に焼き鳥が食いたいと繰り返すのですよ。それはそれはもう耳障りな位に繰り返すのですよ。あんまり五月蝿いもんだから思わず席を立った私はですね、二軒目は河岸を変えて焼き鳥屋での語らいを慮ることにしたのですよ。熱燗・演歌・焼き鳥…情緒を感じながら、情緒まみれになりながら、ってゆうか情緒しか無い間柄を保ちながら口は出さぬが金は出す、額のBerryzのロゴに触れられないよう触れられないよう微妙な角度を調整してふんふん、ふんふんと頷いてみたり時には傾げてみたり、それはまるで取れたての魚の様に縦横無尽に首をくねらせてはときどきお猪口をくいと傾けてみるのです。するとだな、不思議な事にみるみるうちに女と机の間の角度が鋭くなっていくんです。90度から45度、程なくして0度というか180度、終いには机に平行な体制をとっちまいやがった。泥酔しやがったわけですよ、こともあろうに。女はとうとう机につっ伏せて浅い眠りに陥りやがったわけだおい一体どうなっとるんだ。ガゴゴ…ガゴゴ…なんて鼾を轟かせて。それをバックの演歌とミックスして最高に情緒なリミックス音源を作り上げるのよ。あ、きっとこういうのが我が国のBLUESなんじゃないかな、黄色人種のBLUESってこんな場所から産声をあげるんじゃないかな。そんな事を考えて、煙る煙草を燻らせながら物思いに耽った一夜でした。 「♪しみじみぃ飲めばあ しみじ「うるせぇよ。


けどまぁ男女=エスイーエックスという図式も余りに記号化されすぎてて面白くないから、俺と彼女は良き飲み友達になることを約束してサイナラッキョしました。夜中の一時二時から飲める女性が近場にできたというのはそれだけで幸せなことなんだよきっとね。