あたりまえのこと

髭が飲食に向かない事はわかってる、けれど切れないものは切れないんだよ。
この髭のせいで人生をいくつも損してきたかもしれない、そして今回も損をするかもしれない。
バーというところは酒というものを取り扱うところ、粋無しでは語れない場所なんだと思っていたがそうでもなかった。
アナタの言っている事は正しい、非の打ち所が無い。
でも…お酒ってそんなガチガチな飲み物でしたか?ロックってそんな規律的な音楽でしたか?
独善的なモラルを強要されて、起こるかもわからないアクシデントに怯えて長所も短所も削っていくならバーテンはバーテンじゃなくていのではないでしょうか、人の形をしたロボットでいいのではないでしょうか。
皆言えないだけ?だから俺が代表して?…本当に他の皆は迷惑に感じていますか?仮にも店長ともあろうアノ人が注意しないのは気を遣っているからとでも?言わないのは、その程度にしか感じていないからではないですか?
こんな格好だとわかっていながら採用したのはアナタをも雇っているオーナーですよ?
いつも一人のモラリストの為に俺は立場を追いやられる。
全てがなんてこと無い言い訳に聞こえることでしょう。
俺は仕事をクビになるかもしれない。


というわけで数時間後。
試しに髭を細く捻ってピンで止めたらかなり見栄えがしなくなった これはいけるんじゃないか? さしあたって髭そのものが禁止なわけではなくあの長さと量が問題だったわけなので。
小賢しい知恵でひょうひょうと生きていこうじゃないか、この程度の努力なら厭わない。