座間ナイ〜座間編〜

〜座間編〜
下北沢の駅でC氏と落ち合った俺は小田急の今度は本線に乗り込んだ。これから明朝9時まで長い長い戦い、耐久戦であり消耗戦が始まるのだ。
この時初めてC氏から聞いたのだが座間、とう街は鈴木亜美であったり松嶋奈々子であったりと有名な芸能人を輩出している町、それでいて町名が市名に冠せられる程なのだから規模としてはそれなりのクラスであるだろう、という俺の予想を容易く裏切って駅を出ると…何もない。
居酒屋2件にミスド、コンビニ、弁当屋などが駅前に申し訳程度に軒を連ねているだけで他にはおよそ見当たる店は皆無。そういえば遠い昔に関係のあった女が座間に住んでいるといっていたが…まさかこれほどまでに田舎だったとは…さぞ毎週遊びに来るのも大変だったろうに
そこから俺たちはハーモニーホールを目指し歩き始めた。歩き始めは歩き途中となったはいいが歩き終わりが一向に見つからない、どこまで行っても家&田。そもそも人がいない、ゴーストタウンではないかと錯覚させられる程の過疎率だ。この町の人間は夜6時を過ぎると外出してはいけないという決まりでもあるのか?
そんな最中漸く一人の老人を発見し道を尋ねる、九死に一生ノリで道案内を受けた俺たちがハーモニーホールに辿り着いた時には長い昼の太陽がその姿を山の向こうに隠してしまおうとする瞬間ギリギリだったんじゃないか。
既にそこには何人かの人間(ヲタ)が屯しており今夜の熾烈を直感的に感じる破目になる
連絡名簿に順番と名前、携帯番号を明記し、近場の公園へ腰を下ろし召集の23時をひたすら待った
会場から数分歩いたところにオアシスなコンビニと酒屋(しかしどちらも22:00閉店、ヤル気ゼロですね)を見出し、少しばかりの食事とアルコールで時間の感覚を忘れさせようと懸命だった
そうこうしている間に俺は眠ってしまったようだ、時計の針は今まさに11時を差そうとしている
もう既に公園には100人からを超えるヲタが集まって、仕切り役の号令を今か今かと待ちわびていた
次第にヲタは行列になり徐々に進行を始める、固定の位置を確保したならば後は明朝まで眠るだけだ
無防備にも徒手空拳で参列した俺たちが自分の浅はかさを呪い始めた頃、どちらからともなく前のヲタの人たちとの交流が始まり、あまつさえビニールシートに座らせてもらえる事に。これには頭が下がる、本当に感謝。
この場にいるヲタの皆が仲間なんだ、運命共同体なんだと熱い想いが胸に去来するもそんな幻想は次の瞬間いとも簡単に打ち破られてしまう
俺たちの少しばかり後ろに並んでいる連中は鳩のDQN共であったらしく、必要以上に自分達のDQNっぷりを周りに誇示したいのか「ブン殴る」だの「中学校では暴れてた」だの「ワタリ数十センチのボンタン」だのリアルDQNな騒音公害を全方位的に撒き散らしている。それは時間を重ね夜の闇が深みを増してもなお衰える事は無く、むしろ悪化の一方を辿るばかりであった。
近くにオジサンやオバサンが並んでいるにも関わらず「初体験は14才」「セックスがどうしたこうした」「ちゃねらーモイキー(完全に矛盾して破綻)」などと恥じらいも躊躇もなく撒き散らしまくる、見た感じ年齢的には20才前後と若そうではあるが…それにしたってこのリアルDQNっぷりは目に余るものがあるのではないか
別にね、そういう内容を話すも自慢するも勝手だし好きにすればいいと思うんだけどね、これだけ大勢の人間がいて、中には仕事が終わって駆けつけた人なんかもいるだろうにそんな中で気遣いのきの字もなく不愉快(大多数にとって)なトークを延々大声で喚き散らすのは流石に考え物なんじゃないでしょうかって話。
あと、人間を見てくれで判断するのが俺の悪いクセかもしれないが「ブン殴るよ?」を必ずといって良いほど語尾に付けながら言葉を発するその男なんてのはどう見ても百戦錬磨の喧嘩王には見えず、むしろポストスネオなポジションにいたのではないか?と思わせる風体で悲しくなってきた。BLUESが聞こえた。
かく言う俺も喧嘩は強くないので黙って眠るに懸命だったんですけどね
途中何度も目を覚ますとその度にC氏は焼酎を注いだコップを手にしていた
申し訳無いな、と心で詫びつつもノイバウテンゲロゲリゲゲゲとは180度方向性の違った耳障りなノイズと極度の退屈の為に無意識の世界で時間を送るより他なかったのだ、すまん。
前述のコンビニは22時でその営業を全うしたつもりらしいので二番目に近いコンビニ(片道15分)であるセブンイレブン田舎店に足を運んで雑誌を立ち読みしたり、昼間に買った小説を読んではまた寝たり、突然の雨に屋根のある場所に避難したりしながらひたすら黙々と時間の経つのを待った
朝は8時に差し掛かる前だったろうか、天候の悪さを見かねた係員(座間のお役人さん)の計らいで建物の中にて発売時間まで待機させてもらえる事になって一安心。前や後ろに並んでいる人たちと喜びを分け合いつつ入館
とは言え館内に入れたヲタは合計300人弱程度のもので、残りのヲタは依然小雨の中での待機を余儀なくされる(館内にいたのは全員が全員徹夜組だったのでこれはもう仕方がないだろう、結局始発なんて甘い温い夢を持って来た人間はチケットを購入できなかったんじゃないかな?意地の悪い発言ですが「ざまをみろbyキムタコ」とだけお伝えしておきます)
ここで用紙が配られる、その用紙に希望公演と枚数、自分の連絡先を記入して代金と一緒に提出するとチケットを購入できるというシステムらしい
そう複雑でもない仕組みでチケットはいよいよ現実味を帯びて目の前に迫ってくる
そしていよいよ販売開始、整理番号一番から順にゲートへ
が、まじで死ねよクソども
ここでまたしても苛立つ状況がやってくる
チケット購入の際、ある程度の座席を選べるようになっているというのはありがたいシステムだ。だがそれに乗じていつまでたっても自分の座席を確定できない優柔不断な軟弱野郎どもが列の頭に固まっていやがる
さっさとしろやマジでゴミクズ、こんなにむかついたのは久しぶりだよ愚図にも程があるぜリアルで死んでくれ
一人がチケットを購入するのに要している時間が約1分、会場には内外合わせて400人からのヲタがそれを待っている。
単純計算すると全員チケットを手にするまでに400分、即ち7時間弱かかるという事ですか
後ろからの苦情が聞こえていないはずない、だのにゲートに入ったヤツラはのんびりのんびりと美味しい席を品定めしている。マジでどうしてここまで他人の迷惑を考えられないヤツラが地上に存在するのか、そしてそれはもしかしたら一方では俺らのヲタ芸もそう思わせているのではないか、複雑な気分になった。
しかし差し当たっては取り急ぎ交換ですよ購入ですよ、なかんずく40番代のヤツラなんて15分くらいかけてやがったんじゃないでしょうか?もう、ここで愚痴るしかないわけですよ情けないながらも
マジヲタのキモさと自己中さをとくと思い知らされ俺たちがチケットを手に入れたのは10時を少しまわった頃だったんじゃないかな…俺らの前後の人間は非常に苛立っていたのでとにかくスムーズにチケットを購入して外へ出た。多分10人で5分かかってないんじゃないかな、自画自賛かもしれないが行動の迅速な10人の中にいれたことを少し誇りに思うよ。
その後の鳩の連中も交換はスムーズに行ってたっぽいし
必死系の人間はニ徹、三徹してるのだから俺らより血走り指数は高いのかもしれないけど…それにしたってチケット一枚買うのに1分はありえないでしょう?係員はテキパキと応対できる人たちだったし
ああやっぱマジヲタのひとってウザイんだなって痛感したよ…ウザイっていうかもうちょっと他人の迷惑を考えましょう、どうしても迷惑をかけてしまう時はせめて悪いなと思いながら迷惑をかけましょう
逆説的にそういう意味で自分は冷めてるヲタなのかもしれないけどね…
愛のある行動は羨ましいけど、やっぱりどう考えてもおかしいよ
些細な事で苛ついてすまん、心の狭い人間なんです俺は
自分がどれだけ他人に迷惑をかけているかわかっていないのはきっと俺も一緒なんだろうに…そんな時は怒られたいというのは甘えなんでしょうかね?
でもヲタ芸は…是か否かといわれれば…あ〜、否であったほうが健全だしなぁ…
だり。思考放棄。
ってかどうでもいいんだわ、理屈抜き、単純に俺様を一時間も待たせんちゃうぞって事でいいや
ムカツイたんだわ、そんだけ。


突然The end